モンゴルの民族衣装

02 Mar, 2024

民族衣装とは、どのような国々、どのような人種や部族であれ持っている衣装のことです。

その衣装は一見すると、装飾であったり、様式美であったりに目が行きがちですが、その実、人々の歴史的背景が如実に出ています。

モンゴル民族衣装の基本

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デールの基本的な特徴

モンゴルの民族衣装は「デール」という名前で知られていますが、一口にデールと言っても、その形式は部族によって様々。

チンギス=ハーンがモンゴル高原を統一するまで、モンゴルは多数の部族による群雄割拠な時代がありました。

そのため、部族ごとに衣服の統一がなかったため、様々なデールが生まれることになったのです。

デールと一緒に身に着ける靴や帯にも部族ごとに数十種類あるというのですから驚きですよね。

モンゴルのデールはルーツが中国のチャイナドレスがルーツではないかと言われていますが全然違います。

基本的に立ち襟であり、首と右胸、右わき、右腰の4か所でボタンを留めます。

次に、腰に帯を巻いて整えるような形です。

実は、デールには夏用と冬用が存在します。

夏のデールの特徴

モンゴルは昼夜の温度差然り、夏と冬の寒暖差が非常に激しいです。そのため、デールを季節ごとに使い分けるのは理に適っているのです。

まずは夏用のデールから紹介します。

モンゴルの夏は比較的冷涼であり、平均気温は19度ほど。暑い日は30度を超えるような日もあり。日本のような高湿ではなく、どちらかといえば乾燥しているので過ごしやすい面も。

しかし、日本よりも紫外線量が多いため、夏場に着るデールには紫外線から体を守るような工を拵えています。

素材は綿や絹といった通気性・吸湿性いずれにも富む素材が使われています。

冬のデールの特徴

比較的過ごしやすいと言われている夏に対して、冬の厳しさは尋常ではないです。

9月頃はまだ過ごしやすいのですが、10月以降は一気に冷え込むことになります。

12月、寒さが最も厳しくなる時期に-20度から-30度までなる場合もあります。

しかも、モンゴルは国土のほとんどが高原であり、風を遮るものがほとんどないため、強い大陸風も吹き荒れます。

そのような厳しい寒さから身を守るためにも冬用のデールは必要不可欠!

寒さや風から身を守るため、生地は羊毛と動物の毛皮によってつくられています。

デールの機能性

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モンゴル民族衣装であるデールは遊牧騎馬民族の文化に寄り添った設計になっています。

体の表面を覆う面積が多く、気密性が高いので、野営をする際の団替わりになってくれたり、長い裾をタオルやハンカチのようにして使ったりもします。

また、袖は手綱を引くのに手を保護する即席なグローブとしても機能します。

下半身は大股開きがしやすく、騎馬の際にまったく邪魔になりません。

このように、一見すると、チャイナドレスに似ていそうなデールがその実、古来から北方民族に受け継がれる胡服の性能をしっかりと受け継いでいるのがわかりますね。

男性用デールの特徴

モンゴルの民族衣装は男性用、女性用共に非常によく似た作りとなっています。

男性用のデールは体に対して割合ゆったりとした寸法になっています。

男性は煌びやかさよりも格調高さを重んじており、生地の色は一見すると渋めで淡い色であることが多いです。

中でも、青色が最も格式ある色であるとされています。

また、男性はデールに合わせて、ジャンジュン・マルガイと呼ばれる帽子をかぶります。

玉ねぎのような形をしている特徴的な帽子です。

これは男性しかかぶりません。ジャンジュン・マルガイの名前の意味が「将軍」であるところからもこの帽子の意義がわかると思います。

モンゴルの民族衣装に合わせる靴はモンゴルゴタルと言う名前なのですが、このゴタルはちょっと歩きにくいです。

なぜ歩きにくいかと言いますと、前述のデールと同様に、馬に乗り、平原を闊歩することを念頭に置いている靴だからです。

ゴタルは馬に乗った時、足先が鐙から落ちるのを防ぐためで、硬く頑丈ですが、その分普通に歩くのには適しません。

女性用デールの特徴

次に、女性用デールです。

女性用デールも基本的な形式や着付け方は男性用デールとそこまで差異はありません。

しかし、そのデザインや色に大きな特徴があります。

男性用デールが比較的ゆったりとしたものを着るのに対し、女性用デールは体の艶やかさを演出するために、ウエストを強調したデールを着つけます。

また、男性用に比べ、全体が煌びやかに円シュルされており、帽子一つにしても、頭頂部に長い飾り紐があるなどの工夫が伺えます。

遊牧民の特に女性にとって、このようなアクセサリーは非常に大事な資産になりえます。

日常的につけられている装飾は銀製品が多く、何かの儀式などで着飾る時はその時々の状況に合わせて珊瑚、トルコ石、ヒスイなどの更に高価なものに付け替えたりもします。

男性の装飾具がボタンや帯、指輪などに限定されるのに比べると、すごい違いですね。

珊瑚がアクセサリーに使われていた?

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前述の通り、モンゴル女性はデールに珊瑚などで作ったアクセサリーを合わせます。

しかし、よく考えてみてください。

モンゴルはその国境を中国とロシアに囲まれた完全な内陸国です。珊瑚は海で産出される水産資源ですが、一体内陸国のどこで珊瑚がとれるのでしょうか。

実は、珊瑚と言っても使われるのは珊瑚の化石です。

つまり、モンゴルのある場所がまだ海だったころに生きていた珊瑚が化石化したものを使っています。

それでも、量がたくさんあるかと言われればそうではなく、モンゴルの女性にとって美しい珊瑚のアクセサリーを手に入れるのは少し贅沢です。

他に使われるアクセサリーの素材として、ヒスイなども挙げられますが、それらはシルクロードを渡ってやってきた輸入品などを使うそうです。

トルグード族 (Torguud) 

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モンゴルの最西端に住んでおり、その人口規模は15000人と決して大きい部族グループではありません。

しかし、トルグード族の民族衣装は男女共に長年変わっていません。

男性のトルグード族の冬用デールはTojooと呼ばれ、黒いコーナーラインとリバーシブルカラーが特徴的です。

また、帽子はハルバンというものを着用します。このハルバンはトルグード族の大人しか着用せず、若者や子どもはジャタグと呼ばれる別の帽子を被ります。

一方、女性は一般的なモンゴルの民族衣装同様、非常に煌びやかです。

特に、ツェゲグと呼ばれる袖なしのアウタージャケットは特別な儀式や行事のために着用される、特におしゃれな民族衣装。

女性の帽子はトーツォグと呼ばれ、こちらは真珠や珊瑚などで飾られています。

バヤド族(Bayad)

Баяд :: www.touristinfocenter.mn

バヤド族はモンゴルで57000人いるグループです。

バヤド族の男性は白い革製のデールを愛用します。

対して、女性は白い襟を持つ赤系統色のジャケットを羽織ります。

バヤド族の女性のデールの白い襟は自分の体を象徴しており、不運や霊から自分の体を保護し、純粋さを表すと言われており、特に既婚の女性が原則着るものとされているようです。

ザハチン族 (Zakhachin)

 

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ザハチン族はモンゴルに33000人いる部族グループです。

ザハチンはユーモアのセンスが高く、「Bii Bielgee」と呼ばれる伝統的なダンスを踊ることで知られています。

ザハチンのダンサーはその踊りで水や風、乗馬、家畜の搾乳をする様などを表現しています。

ザハチン族は男女ともにカルバンと呼ばれる帽子をかぶります。

男女では違う衣装や被り物をすることが多い他の部族とは対照的ですね。

ブリアド族  (Buriad)      

Oyubi design LLC - Монгол үндэстэн ястан -Буриад | Facebook

モンゴルに46000人いる部族グループです。

古来から、主な食糧源を狩猟によって賄ってきたという歴史があります。

ブリアド族のデールには3つの明るい色のストライプを持ちます。これらの色は最高の状態、最低の状態、中空の状態の精神を意味しているそうです。

もっと前のブリアド族衣装では、死・悲しみ。痛みを表していたそうですが、これらの色合いやその意味は年代によって変わってきます。

カザフ族 (Kazakh)

Mongolcostumes center - Казак Казак нь Мусалман шашинтай, түрэг гаралтай.  Малгайдаа шар шувууны өдийг аз жаргал авчирдаг хэмээн бэлэгшээн хаддаг.  Эрчүүд нь тэнгэрт толгойгоо харуулдаггүй учраас цагаан алчуур толгойдоо  зангидах ба Келеш

 歴史的にも、カザフスタンに近しい民族です。1940年以降はバヤン・ウルギ県に多数が住み、現在はモンゴル国内人口の1割ほどをしめます。

こういった背景のため、その衣装もモンゴルの他部族とは少し様相が違います。

タタール人、ロシア人、トゥレグ等中央アジアにいる多くの民族から文化影響を受けていた名残が未だに残っているのでしょうね。

彼らは野生の動物の皮から基本となる服を作り、それをシルクなどの材料を使用して装飾をしています。

ダリガンガ族 (Dariganga)

Mongolcostumes center - Дарьганга Дарьганга эрэгтэйчүүд үндэсний дээл  хувцасаа мөнгөн дарханаар чимэглэдэг. Дарьганга эмэгтэй хүндэтгэлийн  хувцастай. Толгойн мөнгөн болон шүрэн шигтгээтэй үсний мөнгөн туйв зүүсэн.  | FacebookҮндэсний хувцас хэрэглэгчид | ДАРЬГАНГА | Facebook

現在、28000人がモンゴル国境南東に沿って住んでいます。

彼らは良馬と銀の工芸品で優れた部族として古くからよく知られています。

そのため、彼らの部族衣装も銀製品によって装飾されたものが多いです。

デールの前に髪から2つの装飾品をぶら下げ、その装飾品は銀と赤い珊瑚によってつくられています。

この装飾品をタチュアと呼び、ダリガンガ族特有のものです。

ウリアンハイ族(Uriankhai )

 

Алтайн Урианхай — Википедиа нэвтэрхий толь

 現在、27000人がバヤンウルギ県に住みます。

男性は日常生活において、白いデールを好む傾向にあるようです。

側面の隙間には黒い螺旋構造の紋様で飾られており、エッジも同様に黒の素材で縁取りされています。

女性は地面につきそうなほど長いジャケット、「イヤーマフ」を着ますが、これは天候に応じて着用方法を変えられる優れもの。

他の部族衣装と同じように、カラフルで装飾豊かです。

ダリガンガ族(Dariganga)

Миний эрх чөлөөний талбар: Монгол угсааны ястангууд - Дарьганга

言語としてはハルハ族に近いと言われるのが、ダリガンガ族。人口は約2万8,000人、モンゴル国の人口に占める割合は約1%ほどです。彼らの多くはスフバートル州の南部、ゴビ砂漠近くの火山高原に暮らしています。

ダリガンガ族はもともと、清朝統治時代に最高の名馬を世話するために選ばれた部族です。このときガンガ湖近くのダリカリンへ移動させられたため、「ダリガンガ」と呼ばれるようになりました。

リガンガ族の民族衣装は、ハルハ族のそれとよく似ています。女性用のデールは上質なシルクでできており、袖部分が大きく広がっているのが特徴です。装飾品には珊瑚や銀が多様され、頭の両側からは美しい銀の鎖を長く垂らします 

現在も、ダリガンガ族は駿馬と美しい銀細工で広く知られています。